【初心者必見】スノボにワックスは必要?効果・種類・塗り方を徹底解説

  • 公開日:2025.10.13
  • 更新日:2025.10.13
スノボイメージ

スノーボードのワックスは、滑走面(ソール)に塗布する油脂やパラフィン系を主成分とした保護・滑走剤です。主な目的は、雪面との摩擦を減らして滑りを良くすることと、板の滑走面を乾燥や汚れから保護し、寿命を延ばすことです。雪温や目的に応じて「ホットワックス(持続性高)」や「簡易ワックス(手軽)」を使い分け手入れすれば、ボード本来の性能を引き出して上達につながる一因にもなります。

スノーボーダーイメージ

ワクシング(Waxing)の必要性と効果

ワクシング(Waxing)は、板の滑走面(ソール)にワックスを塗布する一連のメンテナンス作業です。快適な滑走のためだけでなく、ボードを長持ちさせるためにも欠かせない非常に重要な工程で、必要性とメリットは大きく分けて以下の2点に集約されます。

1.滑走性の向上(滑りに関するメリット)

ワックスの最大の目的は、雪面との摩擦抵抗を減らし、ボードをスムーズに走らせることです。スムーズな滑走ができれば上達の促進や疲労軽減にもつながり多くのメリットが出てきます。

水膜のコントロール

ボードが雪面と接すると摩擦熱で雪がわずかに溶けて水膜ができます。ワックスはこの水膜を適切にコントロールし、雪がボードに張り付く現象(水分の吸い付き抵抗)を防ぎます。

静電気の抑制

ワックスは静電気の発生も抑えるため、滑走面に雪の不純物や汚れが吸い付くのを防ぎ、滑走性を保ちます。

走る板で上達が早い

ワックスがしっかりかかっていると、平らな場所や緩斜面で板が止まりにくくなります。これにより、不要な力を使わずに滑ることができ、正しいフォームでの練習に集中でき、上達が早くなります。

操作性の向上

板がスムーズに動くため、ターンやトリックのきっかけを作りやすく、疲れやストレスの軽減にもつながります。

雪質対応・コンディションへの適応

雪温や雪質(新雪、湿雪、ザラメ雪など)に合わせてワックスの種類を選べば、どんなコンディションでも安定した滑走性を得ることができます。特に水分が多い春雪では、ワックスによる撥水性が非常に重要になります。

2. ボードの保護(耐久性に関するメリット)

ワックスは、スノーボードの滑走面(ソール)を外部のダメージから守る役割があります。また、滑走面の乾燥、劣化防止、汚れや傷から守るといった役割も担っています。

酸化の防止

ワックスを塗ることで滑走面が空気に触れて酸化するのを防ぎ、ボードの寿命を延ばしてくれます。特にシーズンオフの保管前には、ワックスを厚く塗って保護することが非常に重要です。

汚れの付着防止

ワックスがコーティングの役割を果たし、雪に含まれる土、黄砂、花粉などの不純物が滑走面に直接付着するのを防ぎます。

エッジのサビ防止

ワックスは水を弾くため、ボードの金属部分であるエッジのサビを防ぐ効果もあります。そのため、シーズンオフに保管する前や、雨や湿った雪で滑った日の滑走後の手入れとして塗りますが、競技者や滑走性を極限まで高めたい上級者は、滑走直前にエッジからワックスを剥がし、研磨されたエッジ面を露出させます。これは、ワックスが雪面との摩擦で抵抗になるのを防ぐためです。

摩耗の抑制

雪の結晶は硬い氷の粒です。ワックスでソールをコーティングすることで、雪との直接的な摩擦による摩耗や、小さな傷がつくのを防ぎます。
ワックスを塗らないことは、滑走性の大幅な低下だけでなく、大切なボードの寿命を縮めることにもつながります。特にホットワックスは、これらのメリットを持続させるために最も効果的な手段です。

ワクシングキット

ワックスの種類と塗り方

スノーボードワックスは、主にその施工方法と持続性によって大きく2種類に分けられます。

① ホットワックス(固形ワックス)

アイロンで熱してワックスを溶かし、滑走面(ソール)に浸透させる方法です。
持続性が高くワックスが深く浸透し板の性能を引き出しながら2〜3日の滑走でも効果が持続されます。ホットワックスは、雪温や雪質(新雪、湿雪など)に合わせて細かく種類が分かれていて、初心者にはオールラウンドタイプが便利です。
ホットワックスで本格的なメンテナンスを行う場合、主に以下の3種類のワックスを段階的に使用します。

〇ホットワックスの種類

クリーニングワックス(CLEANING WAX)
滑走面に染み込んだ古いワックスや、滑走中に付着した汚れを浮き上がらせて取り除くためのワックスです。非常に柔らかいワックスで、アイロンの熱で素早く溶け、滑走面の汚れを吸着します。これをスクレーパーで剥がすことで、ソールをきれいにします。
<使用のタイミング>
シーズン初めのメンテナンスや、滑走面がひどく汚れたとき。

ベースワックス(BASE WAX)
滑走面(ソール)の土台作りと保護を目的とする最も重要なワックスです。滑走面にワックス成分をしっかりと浸透させ、その後の滑走ワックスの定着を良くします。分子構造の小さな硬めのパラフィンワックスが主流で、何度も塗り込むことで、ワックスが抜けにくい強靭な下地が完成します。ベースができていないと、滑走ワックスを塗ってもすぐに効果が落ちてしまう事からも重要なワックスと言えます。
<使用のタイミング>
新品のボード、シーズンイン前、ホットワックスを長期間していないとき。

滑走ワックス(GLIDE WAX / FINISH WAX)
滑走性を高める仕上げのワックスです。ベースワックスの上から塗布し、雪面との摩擦を減らし、スピードを出やすくします。雪温や雪質に合わせた硬さや成分(フッ素など)が配合されており、ベースワックスよりも滑走性能が高いです。
<使用のタイミング>
滑走前、または滑走性が落ちたとき。

使い方・塗り方

1. クリーニング
リムーバーで滑走面の汚れや古いワックスを拭き取ります。

2. ワックスを溶かす
専用アイロンで固形ワックスを溶かし、滑走面全体に均等に垂らします。

3. ワックスを浸透させる
アイロンを止めずに動かし、溶けたワックスを滑走面全体にムラなく広げます。この際、ワックスペーパーを挟むと焦げ付き防止になります。

4. 冷却
10〜20分程度放置し、ワックスを完全に冷やし固めます。

5. スクレーピング
プラスチック製のスクレーパーを使い、進行方向(ノーズからテール)に向かって余分なワックスを削り取ります。滑走面にワックスが残らないよう、ツルツルになるまで削ります。

6. ブラッシング
ナイロンブラシなどでブラッシングして、滑走面のストラクチャー(細かい溝)に残ったワックスをかき出し、滑走面をきれいに仕上げます。

② 簡易ワックス(初心者向け)

アイロンを使わずに、手軽に塗布できるワックスです。ペースト、リキッド、スプレー、固形(生塗り)の4種類のタイプがありますが、どれも数本から数時間の滑走程度の持続性です。

〇簡易ワックスの種類

ペーストタイプ
スポンジなどで塗り込み、コルクなどで擦り込む。ホットワックスの次に持続性があるタイプ。

リキッドタイプ
液体ワックス(スプレー)タイプ。手軽に塗れて効果も高いが、揮発性があるので換気が必要なため使用する際は場所に注意が必要です。

スプレータイプ
吹き付けて布で伸ばす使用法で最も手軽ですが、持続性は最も低いです。

固形(生塗り)
固形ワックスを滑走面に直接擦り付ける使用法で、ゲレンデでの応急処置として便利です。

使い方・塗り方

1. クリーニング
リムーバー(専用クリーナー)を滑走面に吹きかけ、キッチンペーパーなどで汚れや古いワックスを拭き取ります。

2. 塗布
ワックスを滑走面全体にムラなく塗ります。(スプレーやリキッドは吹き付けて伸ばす、ペーストはスポンジなどで塗り込む。)

3. 擦り込み
ペーストや生塗りの場合は、コルクなどで擦り込むと、摩擦熱でワックスが浸透し、持続性がアップします。

4. 乾燥
メーカー指定の時間(5〜10分程度)しっかりと乾燥させます。

スノボ作業台

ワックスの選び方

初級者向けのワックスの選び方

初級者の方は、手間なく簡単に塗れて、滑走面を保護できる「簡易ワックス」や「オールラウンドワックス」がおすすめです。ワックスを塗る作業は手間がかかりすぎると続かなくなることが多く、アイロン不要でサッと塗れるものから始めましょう。滑走面(ソール)の乾燥や傷を防ぐ「ベースワックス」の役割を兼ねるものを選び、ボードを長持ちさせるワックス選びもポイントです。

上級者向けのワックスの選び方

上級者の方は、雪質や気温に合わせた「ホットワックス」を使い分け、最高の滑走性能と持続性を考えます。ワックスを、雪温(-10℃、-5℃、0℃など)や雪質(乾雪、湿雪、新雪など)に合わせて使い分け、ベースワックスで下地を作り、その上に滑走ワックス(フッ素系など)を塗る「二層構造」で最高の性能を引き出します

スポーツ用品店

自分でワックスを塗る自信がない、面倒、そんな方に

スポーツ店ではスノボのメンテナンスやワックスがけを依頼できるショップがあります。一番簡単で確実なおすすめのメンテナンス方法はプロにお願いする事。メンテナンス内容やワックスの詳細、価格は変わるため、店舗に問合せが必要ですが2025年時点の情報を一部抜粋してご紹介します。

ムラサキスポーツ(ムラスポ)

簡易ホットワックス(2,000~3,000円程度)
アイロンでワックスを塗る基本的なサービス。即日仕上げ可能な店舗もあります。

スペシャルホットワックス(5,500〜13,200円程度)
数日間かけてワックスの塗り剥がしを繰り返し、滑走面に深く浸透させる本格的なコース。フッ素配合など、使用するワックスによって料金が変動します。

ベースワックス(無料)
ムラサキスポーツでボードを購入した場合、ベースワックスの施工をシーズン中・シーズンオフ問わず永続的に無料で受けられるムラスポオリジナルサービスがあるようです。

フルチューンナップ(10,000〜15,000円程度)
滑走面のリペア(修理)、エッジ研磨、ストラクチャー加工、ホットワックスなど、ボード全体をリフレッシュするサービス。

モリヤマスポーツ(モリスポ)

滑走ワックス(料金は要確認)
シーズン中の滑走性を維持するためのホットワックス。簡易ワックスから競技用ワックスまで種類がありますが料金は時期や店舗で異なるため要確認。

チューンナップ(料金は要確認)
滑走面のリペア(傷埋め)、エッジ研磨、ストラクチャー加工、ホットワックスなど、ボード全体を再生するサービス。他店購入品は高額になる傾向があります。

修理(リペア)(2,000円〜/箇所数)
ビンディングやブーツのパーツ交換など。モリスポで商品を購入した証明書提示で割引が適用されることがあります。

タナベスポーツ

簡易ホットワックス(2,000〜3,000円程度)
高機能なワックスを使用するケースが多くコスパ高めです。

本格的なホットワックスコース(5,000〜10,000円以上)
ベースワックスや雪温に合わせた滑走ワックスの施工が含まれた本格コース

フルチューンナップコース(10,000〜20,000円以上)
滑走面の修理(リペア)、エッジ研磨、ストラクチャー加工、そしてワックスがセットになったコースです。これはワックス単体ではなくボード全体を再生するもので上級者向け。

スポーツデポ(アルペングループ)

WAXチューン(1)(2,000円程度)
ワックス加工のみの最もシンプルなコース。即滑走用ワックスの塗布が中心と考えられます

WAXチューン(2)(5,000円程度)
クリーニングワックス、WAX落とし(ケバ取り加工中心)、ベースWAXを含むコース。滑走面のベース作りを目的としています。

WAXチューン(3)(6,500円程度)
クリーニングWAX、ベースWAXに加え、HF(ハイフッ素)WAXなどの高機能ワックスで仕上げるコース。滑走性と持続性を重視しています。

サーモWAX加工(4,000円程度)
専用マシン(サーモボックスなど)を使い、ワックスを深く浸透させる処理。

フルチューンナップ(6,000円~)
新品の乗り出し初期チューンナップ(レギュラーチューンナップ)の目安。

本格フルチューンナップ(14,300~19,800円程度)
滑走面の研磨、リペア、エッジ研磨、ホットワックスなど、ボード全体を再生するコース。エッジの手仕上げやレーシング仕上げなど、細かなコースに分かれます。

事前のメンテナンス・ワックスを忘れて、スキー場に。

そんな場合、一部のスキー場ではゲレンデや、ゲレンデに隣接する専門ショップでワキシングサービスを受けることができます。その内容は大きく分けて2種類、短時間の簡易ワックスとホットワックスを使ったサービスです。

簡易ワックス(クイックワックス)

アイロンを使わず、ペーストやリキッドワックスを滑走面に塗布し、すぐに滑れる状態にするサービスです。所要時間が短く、料金も手軽ですが効果は短時間のため滑走中に滑りが悪くなった際の緊急対応としても利用されます。
料金目安: 500円〜1,500円程度(スキー場により異なります)

ホットワックス

アイロンを使い、ワックスを熱で滑走面に浸透させる本格的なサービスです。簡易ワックスより滑走性の持続性が高く、滑走面の保護効果も高いです。
料金目安: 2,000円〜3,500円程度(スキー場により異なります)

野沢温泉スキー場

ワクシングサービスを提供しているスキー場例

かぐらスキー場 (新潟県)

HOT ACCHIというショップでホットワックス(約30分)や簡易ワックスを提供。

野沢温泉スキー場 (長野県)

HOT ゴンドラリフト長坂センターハウス2階のTune-up shop GLATT(グラット)で最新ストラクチャーマシーンを使った本格的チューンナップサービスを、長坂ゴンドラの目の前にあるレンタルショップMt’Dock NOZAWAでホットワックスサービスを提供

絶景・猪苗代スキー場 (福島県)

ベースエリアにワックストンネルという液体タイプワックスの塗布から乾燥までをベルトコンベア方式で約30秒で完了させるマシンを導入。2025-2026年冬季は無料キャンペーン中です。

GALA湯沢スキー場(新潟県)

ゴンドラ山頂チアーズ内レンタルコーナーにはホットワックスマシンが設置されていて訳10分2,000円程度で提供。

ルスツリゾート (北海道)

チューンナップサービスとして、サーモバッグやフューチャーワックスなどの高性能なワクシングメニューを提供。

スノーボーダーイメージ2

スノボーワックスメーカー(ブランド)

ハヤシ

スノーボード用ワックスでは、日本の雪質とレースシーンに特化して開発された高性能ワックスブランド「ハヤシ(HAYASHI WAX)」が有名です。その最大の強みは、雪面との静電気摩擦を軽減するための特殊な成分にあります。ハヤシワックスは、この静電気をカットする二硫化タングステンや、スーパーダイヤモンドなどの特殊な最高硬度物質をワックスに高配合しているのが特徴です。これにより、特に日本の湿雪や悪雪(黄砂・花粉などが混ざった雪)において、高い滑走性と持続性を発揮します。

ガリウム

ベース作りから競技まで幅広く使われる国内有数の総合ワックスブランドが「ガリウム(GALLIUM)」です。その最大の独自技術は、ブランド名にもなっている「ガリウム(Ga)」という特殊な金属元素を配合している点にあります。ガリウムは融点が約29.78℃と低く、ワックスに配合することで静電気抑制(帯電防止)、滑走性・持続性の向上に効果を発揮します。
ガリウムのホットワックスは、ユーザーが使い分けやすいように雪温や雪質に応じて色で分類されています。例えば、EXTRA BASE(ベースワックス)は、 PINK(0℃〜+10℃の水分の多い雪質向き)、VIOLET(-4℃〜+3℃の全雪質向き、日本独特の湿雪向き)、BLUE(-12℃〜-3℃の全雪質向き)、GREEN(-20℃〜-10℃の新雪・乾雪向き)などがあり、仕様時期や雪質・雪温を目安に選べるようになっています。

TOKO

100年以上の歴史を持つスイス発祥の老舗ワックスブランドが「TOKO(トコ)」です。特にスキー・スノーボードのレース界で絶大な信頼を得ており、革新的な技術と環境への配慮が特徴です。1916年に設立され、1933年には木製スキー用ワックスを開発するなど、ワックス分野のパイオニアでアルペンスキーやノルディックスキーのオリンピック、ワールドカップなどで数多くの勝利に貢献しており、競技者から高い評価と信頼を得ています。また、ワックスだけでなく、スノーボード専用のバイス(固定器具)やブラシ、クリーナーなど、ワックス作業をサポートするプロ仕様の高品質なツールも幅広く展開しています。

この記事を書いた人

坂越

坂越 知也

所属
ビーウェーブ大阪本社
スキー・スノボ歴
スノーボードが約20年、5年ほど空白の期間あり。
おすすめスキー場
志賀高原スキー場

撮影など仕事とプライベートで、全国のスキー場の内約1/4程には行ったことになります。企画もご案内も、この経験を最大限生かします。

ページトップへ
検索